2010年02月11日

社会人としての処世術

プログラマとしての能力と、人に物事を伝える能力は、まったく別の話である。しかし得てして、人に物事を伝える能力を持った人のほうが社会では好まれるものであると思う。


あなたは、うるう年がいつ来るか正確に知っているだろうか?

普通の人ならば、こう答えるだろう。「4で割り切れる年はうるう年だ。(A)」

小さな視点で見ると、Aは正解である。

しかし大きな視点で見るとAは不正解だ。

ちょっと詳しく知っている人ならば、こう答える。「4で割り切れる年はうるう年だ。しかし、100で割り切れる年は除く。ただし、400で割り切れる年ならばうるう年だ。(B)」

要約すると、400年、800年、1200年、1600年、2000年、2400年はうるう年だが、1700年、1800年、1900年、2100年、2200年、2300年はうるう年ではない。

小さな視点で見たAがなぜ許されるかというと、俺らが1900年を経験することはもう無いし、2100年まで生きている可能性も限りなく低いからである。4年に1度、と小学生レベルの覚え方でも問題は無い。しかし、それはうるう年の真の正解ではない。真の正解はBなのである。


さて、それでは、「なぜこのような複雑な式(Bのこと)なのか?」と訊かれたら、あなたはどう答えるだろうか。

もっと具体的に状況を説明しよう。あなたは今、クライアントと打ち合わせをしている。そのプロジェクトは、カレンダーに関するプロジェクトだ。カレンダー、いやさ暦のあらゆる仕様を把握し、正確に実装しなければならない。そのとき、うるう年の話になった。クライアントは、Aが正解だと思っていたようだが、真の正解はBである。あなたはクライアントにそれを伝える。クライアントは新たな知識を得、いたく満足されている。あなたへの評価も高まったことだろう。「いやぁ、○○さんは博識ですねぇ。でもどうしてそうなってるんですかね?

あなたは、どう答えるのが正解だろうか。


もっともマズい答えをここに1つ挙げる。それは「そういうものだ」「そうとしか説明のしようがない」「これ以上の説明のしようが無い」といった答えである。

AもBも、1つの公式である。アインシュタインだかフレミングだかグレゴリオだかコペルニクスだか知らないが、天体を観測し、そこからバカな我々一般人にもなんとか理解できるよう、一般化した公式である。しかしだ。公式さえ覚えてしまえばそれで良いのか? 本当に永遠に不変なのか? これ以上の知識を得ることは許されないのか? いやそれより何より、クライアントの些末な要求に応えるのも、下請けの使命なのではないだろうか。

ちょっと話が逸れたな。上記の回答例がなぜダメなのかというと、回答者が質問者の意見をバッサリ斬り捨てているからである。知る必要があるかどうかを決めるのは、回答者ではない。質問者である。ましてや回答者は仕事を貰う側。媚びへつらえなどとは言わないが、婉曲に断るのが、社会人としての正しい回答であろう。

上記の場合、「うーん、私も分からないですねぇ」などとお茶を濁すのが正解の1つである。これが、日本に生きる社会人の処世術というものだ。

ちなみに、もうどうでもいいのだが、上記の正しい回答は、「1年は、正確に数えると平均365.2425日(365日と5時間49分12秒)なので、4年に1回のうるう年ではビミョウに狂うんです。だから、400年に97回にすると、3320年に1日ぐらいの誤差ってことでまぁいっか、となったんです。3320年後に起こる1日分の誤差は、『そのころには地球が変わってしまっているかもしれんし、後世の賢い人が考えれば良くね?』ってことで、放置ってことになったんです。」となる。詳細はWikipediaを参照されたし。(閏年グレゴリオ歴


きちんと社会人としての教育を受けた人には常識的なことだが、ことプログラマの世界や、ゲーム業界などに行くと、どうもこのような社会人としての処世術を知らない者が多い気がする。「そういうものだ」「そうとしか説明のしようがない」「これ以上の説明のしようが無い」などと答える者を見かけることは多い。

事実を端的に伝えることももちろん必要だが、相手の知識量と心情を慮り、クッション言葉と適切で分かりやすい例えなどを交えて、相手が求める回答に近い回答を導き出す技術が社会人には必要なのだと思うのだが、いかがだろうか。
ラベル:説明
posted by 小川 at 01:24| Comment(2) | TrackBack(0) | チラ裏 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>事実を端的に伝えることももちろん必要だが、相手の知識量と心情を慮り、クッション言葉と適切で分かりやすい例えなどを交えて、相手が求める回答に近い回答を導き出す技術が社会人には必要なのだと思うのだが、いかがだろうか。

いや、まったくその通りでね。数字に強い人なら上のような説明でもいいんですけど、数字に弱い人でしたら、公転周期と自転周期のズレがある、ということから説明していったほうがいいかもしれません。

地球が太陽の周りを回って1年経つとまた同じ位置になるのは分かりますよね。
でもだからと言ってその時の日の出のタイミングが同じになるわけじゃないんですよ。だいたい6時間ぐらいずれるんですね。だから4年に1回調節するのがうるう年なんですけど、それでもまだ微妙にずれてるんです。で、そのずれをさらに調節するために100年に1回はうるう年にしないんですけど、でもやっぱりまだちょっとずれるんで400年に1回はキチンとうるう年にすると。。。
だからこの前の2000年はうるう年でしたけど、今度の2100年はうるう年にはならないんですよ。
でも、まだまだちょっとずれてるので、またどこかでうるう年のタイミングがあるのでしょうけど、それこそ何千年に1回なんで、もううちらの誰も生きていない頃ですね。あはは。

私ならこんな風にしますかねぇ。。。上では日の出のタイミングって書いてますけど、物理学的には南中時ですかね。でも分かりやすさを優先させますんで、日の出のタイミングと。

どちらにしても、相手側の知識次第ってのもありますが。。。
Posted by アレックス at 2010年02月11日 20:20
■アレックスさん
まぁ、クライアントに不快な思いをさせないよう意識しつつ、正確に答えるなりお茶を濁すなりすれば、正解かどうかなんてこたぁクライアントも興味ないと思うんです(笑

■ぇぅ
ある程度マニュアル化されてるとはいえ、接客やってた人は問題ない人が多いと思うし、事実ぇぅの対応は問題ないと俺は思うなぁ。
Posted by 小川@管理人 at 2010年02月13日 00:25
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