2009年06月09日

審判視点の考え方

以前紹介したMLBの審判を目指す平林氏の、移転前ブログの過去ログ読みふけっていた。そして、大いに勉強に、知識に、脳のシワになった。

考えてみれば、選手視点、記録視点、監督視点の文献は唸るほどあるが、審判視点の文献は持ち合わせていない。氏のブログの近況も、基本はAAAの話題が多く、がんばってる日常は垣間見れても、審判の考え方や心情についてはあまり触れられていなかった。

しかし、過去ログでは、ちょうどビザが下りないとかマイナー審判の労組がストをやってるとかの事情で、日米の様々なプレイに対して、審判視点のエントリを書いておられる。これが、非常に参考になる。


オールド・ルーキー チャレンジ日記


読み終わったのは、まだ06年3月〜5月までだが、非常に興味深い。特に、いくつかの記事は転載して紹介したくなるほどだ。時間の許す方は、ぜひ、氏のブログを最初から最後まで目を通してほしいと思う。
Bob Davidson という先輩

昨日のシアトルマリナースの試合で球審を務めていたのが、WBCでとても有名になった”ボブ・デビッドソン”です。
(中略)
WBCの件があり、日本では、いろいろと未だにおもしろおかしく報道されていますが、判定に対しの批判はともかく、決して彼の人間性まで否定するような報道だけは、しないで欲しいと強く要望します
古田監督の抗議

問題になった場面は、無死で満塁で打者が打った打球が3塁ベース上に高く弾んでいました。3塁手ヤクルト岩村君がベースに踏んだか、踏まなかったかが、とても微妙で、その後本塁へ送球し、捕手が1塁に転送し、1塁は、アウトになりました。本塁では、ヤクルト米野君は、タッグせずに(フォースプレイだと思ったのでしょう)、次の送球をしました。

この場合、岩村君が3塁を踏んだか、踏まないか、ということに対しての判定で、本塁でのプレイがフォースなのか、タッグプレイなのかが違ってくるのです。(フォースプレイ中に、後の走者が先にアウトになったら)新聞で見る限り、とても微妙です。2塁ベース上でのダブルプレイの際によくありますが、プロの野手が次のプレーに移る時に、ベースを踏む場合、ほんの少しだけベースに”かする”ような踏み方をしていきます。肉眼では、確認できません。音でしか判断できません。
(中略)
しかし、あの場でのやりとりで、古田監督は、塁審が”間違いなく踏みました。”といったことに腹を立てて、審判を”うそつき”扱いをしたとありましたが、あそこでは、審判は、そのように主張するしかないということを理解して欲しいのです。足跡まで持ち出してヤクルト側が踏んでないといっていましたが、ベースをかすめた後の足跡なんか、全く関係ないはずです。
(中略)
日本プロ野球(1軍)の審判は、世界一のプレッシャー下で仕事をしているという事実をわかって欲しいと思います。メジャー審判もとても大きなプレッシャー下で仕事をしていますが、機構と野球規則が、彼らを全面的に守ってくれています日本は、そのバックアップ体制が甘いのです。
抗議に対して

山梨のプロを目指してがんばっている若手審判からこんな相談を受けました。それは、”抗議への対処の仕方”です。
(中略)
審判の本音として、「すみません、間違えたので判定を変えます。」といえたらどんなに楽かと思うことがあります。しかし、これをしだしたら、何でもかんでもクレームがあるたびに判定を変えなければならなくなり、試合にならないのです。そこで、ルールで”審判が下したものが、最終的な判定である。”と謳っているのです。
(中略)
余計なことをいわない、ということが大事です。人間心理として、自己防衛のために、つい、いろいろ言葉を重ねてしまいます。そうすると相手が、その言葉尻をついて他のことで文句を言い出します。最低限、説明しなければならない事は、ありますが、それ以外は説明する必要がありません。
(中略)
一通り説明したら、「充分、説明しましたので、これ以上の抗議は、受け付けません。」と言います。大抵これでも納得できないと言ってくるでしょう。そうしたら、これ以上抗議を続けると退場になるということを告げます。(警告になるのです。)数度、このようなやりとりをし、後は”退場!”となります。これは、”試合進行の為のルール”なのです。
スポーツマンシップ・セミナー(その1)
スポーツマンシップ・セミナー(その2)

ある少年野球の大会を見学していた時のことです。走者が1塁に出塁しました。投手は、投手板を外して、偽投(投げるまね)をしました。これは、ルール上許されるプレーです。走者は、牽制されたと思ってヘッドスライディングで1塁へ戻りました。ここまでは、ごく一般的な野球試合中に起こる事です。ここで、投手が走者が起き上がるか否かの時に、すぐに打者へ投球したのです。走者は、勿論準備が出来ていません。
(中略)
野球の目的は、”勝つ”ことにあります。ただ、あくまでも結果にすぎないのです。まして、こども達の野球においては、もっと大切なことがあるはずです。
(中略)
スポーツである以上、こども達にとっての”教育”であるということを我々大人たちがしっかり考えないといけないことなのです。

勝つ事の味を覚えるということも、ひとつの楽しさかもしれません。が、野球の本当の楽しさ、打つこと、守ること、投げること、打者と投手の勝負などは、” フェアープレー”のもとで行なわれているからこそ楽しめるのです。ですから、勝つ味を伝えることを目的にするのではなく、野球をプレー(遊ぶ)する楽しさを伝え、野球によって、こどもたちが立派な大人に成長するような指導をして欲しいと切に願います。プロ野球選手を何人輩出したかで、指導者や親の優劣を判断するのではなく、何人の”立派な人間”を育てられたかということで判断するべきです。
日米のプロ野球事情

アメリカのプロスポーツは、MLB等の軸になる組織にお金が入り、そこから各チームに分配金が流れるしくみです。(アメリカのプロスポーツは、殆どがこのしくみです。)日本は、逆に各チームから、毎年、うん千万円という拠出金を払ってもらい、そのお金をもとにプロ野球を運営しているのです。このしくみでの一番の問題は、NPBや各リーグが、チームに対して強い姿勢で対応できないというところです。チームにしてみれば、”俺達が金を出して運営しているんだぞ”という感覚を持つのも当然といえるでしょう。

僕がいいたいのは、このしくみによる弊害が、審判に対してにも影響しているということです。各チームから出ているお金で、審判の給料も支払われているのです。日本とアメリカのプロ野球審判の立場やしくみなどの違いは、このような根本的な事情の違いから生まれています。
井口選手の抗議行動

ホワイト・ソックス井口君が、球審のストライク・スリー(三振)の判定に不服で、ヘルメットを地面に投げつけ、罰金を課されたという記事を読みました。この記事を読んで、とても驚きました。まず、どうして”退場”にならなかったのだろうということです。僕は、映像では、見ていないので、何とも判断できないのですが、通常、審判の判定に対しての不満を、態度で示した場合は、自動的に退場になります。以前にも書きましたが、観客など、まわりの人々が、その態度によって、審判に対し不信感を持つような場合には、我々は、退場を宣告します
野村監督の抗議

「ボール、ストライクの判定について異議を唱えるために(中略)監督または、コーチがベンチまたは、コーチスボックスを離れることは許されない。もし、宣告に異議を唱えるために本塁に向ってスタートすれば、警告が発せられる。警告にもかかわらず本塁に近づけば、試合から除かれる。」と日本のルールブックにもあります。アメリカでは、このルールを遵守し(このルールだけでなく)、先ず、『監督、ストライク・ボールに対して出て来ることができません!』と警告を発し(手で制します。)、それでも続けて出てくるようならば、『退場!』を宣告します。これは、1試合で数百球の判定があり、それをいちいち抗議に出てくることが出来たら、野球が進行しないという理由からなのです。ファンに無駄な時間を過ごさせないという発想から出来たルールのようです。

日本では、このルールを適用することに、チームサイドから猛反発があったと聞いています。チームが主導でルールを解釈するのではなく、リーグや審判が主導でルールを遵守する時代が来れば、日本の野球界も本当の意味で改革されるでしょう。
ウエスト審判のゲームコントロール

メジャーリーグ審判のジョー・ウエスト氏(クルーチーフ:4人のクルーでの責任審判)が”ビーンボール”(故意に打者を狙って投球したとして)でヒューストン アストロズのスプリンガー投手とガナー監督の二人を一度に退場をさせました。
(中略)
特にアメリカでは、執拗にインコースを攻めるということをあまりさせないために、ストライクゾーンも”外に甘く、内に厳しい”傾向が昔からあります。これは、内側に甘いと、投手がそこを攻めるようになり、必然的にデッドボールが増え、打者にとって危険であるということと、もともと野球の歴史から考えると、投手は、”打者の打ちやすいところに投げる”ことから始まった野球なので、外側中心に投げるような環境が出来ているのです。
(中略)
投球がボンズ選手の背中後方を通ったところでウエスト球審が、両チームに”警告”を与えました。この判断が素晴らしかったと思います。両軍に警告を与える理由は、報復を防ぐ為なのです。そして、この警告があった場合、もしビーンボールによって退場になれば、自動的に投手と監督の2人が退場になるというルールなのです。

その後もスプリンガー投手は、必要以上にインコースを攻め、ついにボンズ選手の背中に投球が当たり、ウエスト球審がスプリンガー投手とガーナー監督の2人に退場を宣告しました。球審が警告を発していたお陰で、ボンズ選手を始め、ジャイアンツ側は、報復や怒ったような態度を少しもみせませんでした。このようなことが、試合中に審判がしなければならない”ゲームコントロール”なのです。アメリカで審判として評価されるためには、このような能力が一番必要です。僕にとって、とても為になるウエスト球審の状況判断だったのでした。

うーむ。実に興味深い。


横浜監督時代の権藤さんは、決して審判の裁定に抗議することはなかった。ベイナインはそれに対して不満があったというが、果たしてどちらが正しいのだろうか。現在の日本野球では、ナインのほうに分があるが、俺個人としては、権藤さんを支持したいと思った。また、アメリカマイナーコーチ経験のある権藤さんが何故、そのような行動指針を持ったのかも理解できた。

また、明徳が星陵の松井に対して取った手段も、やはり間違いと断じて良いと思った。
posted by 小川 at 18:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 野球 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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